けれど、その夜だけは違っていた。
時間は、すでに夜の10時を回っている。
いつもならもう帰って夕飯の準備をしている時間だ。
少しの不安が頭をよぎる。
ミラ:「……父さん大丈夫かな…?」
帰ってくるはずの父を、幼いボクは座って、ただじっと待つことしかできなかった。
暖炉の火が小さくなり、部屋の温度が下がっていく。
サキュバスと雪の精霊との間に生まれたボクはもともと寒さに耐性があった。
それでも心だけはゆっくりと冷えていく。
❄️【そして──】
気づくと、ボクの目には涙があふれそうになっていた。
ミラ:「……父さん?」
呼びかける声がもう一度漏れた、その時だった。
コン、コン。
静かな家の中に、突然ノックの音が響いた。
──帰ってきた。
ボクは反射的に立ち上がり勢いよく玄関に駆けていく
…けれど、扉を開けた先にいたのは──
赤い髪の少女と、見知らぬ強面の大男だった。
ミラ:「誰?!」
お父さんとは違う見ず知らずの来訪者に不安でいっぱいになり泣き叫びそうになる。そんな時―
紅い髪の女の子:「メリークリスマス! わらわからプレゼントじゃ!」
元気いっぱいの少女がそう言って包みを差し出す。
強面の大男:「おいリリス。お前からのプレゼントじゃないぞ。」
リリスと呼ばれたその少女がむくれた顔をする。
その背後で、強面の大男が静かに頭を下げた。
強面の大男:「……急にすまない。驚かせるつもりはなかったんだ。君の父に頼まれていてな。」
低い声が家の中に響いた。
それ以上、男は何も言わなかった。
ボクも……それ以上、聞けなかった。
怖かったのは男の顔ではなく──
もし“聞いてしまったら”、何かが壊れてしまう気がしたからだ。
そっと包みを開けると、
中には本が一冊入っていた。
ボクが大好きな、冒険譚の本。
ほんの少しだけ、懐かしい香りがした。
それだけで、
胸の奥が、ほんの少しだけ温かくなった。
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